🌌 天の川・天体

天体写真のための晴れた夜空の予報の読み方

ギリシャの山の尾根で、花を咲かせた2本のセイヨウハナズオウと木のベンチの上に天の川が斜めに弧を描き、地平線近くにかすかな光が残っている
ギリシャの尾根で迎えた晴れた夜。予報に劇的なところはなく、雲のない時間帯がちょうど重なっただけです。予報で見極めたいのは、まさにそこです。 Photo: Marcos Barbero

天体写真は、カメラよりも予報が結果を左右するジャンルです。暗い撮影地も、申し分のない月齢も、狙いどおりの位置にある銀河中心もそろっているのに、高い雲がひと筋かかるだけで夜は終わってしまいます。ただ、晴れた夜は予報から読み取れます。星空によく出会える人は運がいいのではなく、どの数字を、どの時間帯について、いつ信じてよいかを知っているだけです。その読み方を紹介します。

「晴れ」の予報と「晴れた夜」の予報は同じではありません。無駄足になる遠出の多くは、このずれから生まれます。天体写真は、あらゆる写真のなかでも空に最も多くを求めます。雨が降らないだけでなく、カメラを向ける空に雲がひとつもないこと、淡い星の光が届くほど空気が澄んでいること、月が邪魔にならないこと、そしてそのすべてが重なる数時間があることが必要です。その重なりは狭く、だからこそきちんと予報する価値があります。

天気ではなく、まず撮影できる時間帯を決める

予報を開く前に、そもそも撮影できるのはいつかを割り出します。次の4つが同時に成り立つ必要があります。

  • 空が完全に暗い。 つまり天文薄明が終わり、太陽が地平線の18°以上下にある状態です。夏の高緯度地域ではこれが一度も起こらず、どんな予報でも変えられません。
  • 狙う対象が空に上がっている。 天の川の銀河中心なら一晩に数時間で、一年のうち撮れない時期もあります(天の川のシーズンとタイミングを参照)。
  • 月が沈んでいるか、細い。 明るい月は、天の川の写真を成り立たせる淡い構造を洗い流します。細い三日月ならかまいませんが、高く昇った満月に近い月は困ります。月相の名前よりも、月の出と月の入りの時刻のほうが大切です。
  • 空が晴れている。 これだけは計算できないので、予報が必要なのもこの1点だけです。

最初の3つは純粋な幾何学です。どの端末でも、通信なしで、分単位まで同じ結果になります。先にこれを計算して、たとえば23:40から3:10までという時間帯が決まれば、予報の仕事はひとつです。その時間帯は晴れているか。 漠然と「今夜」を確認すると、21:00に晴れて4:00に戻ってくる雲のせいで良い夜を見送ったり、21:00には晴れていても銀河中心が昇るころには曇っている夜に車を走らせたりすることになります。

雲は1つの数字ではなく、層で読む

「雲量40%」という1つの数字は、肝心なことを隠しています。雲がどれだけ高いか、どれだけ厚いかです。

  • 下層雲(層雲、霧の帯)は蓋です。頭上にあれば、その夜は終わりです。同時に、いちばん移動して逃れる価値のある雲でもあります。尾根を越えるか1時間走れば、その上に出られることがあります。
  • 中層雲(高積雲、高層雲)は星を隠します。夜は星が消え始めるまで見分けにくいので、不可として扱います。
  • 上層雲(巻雲)は厄介です。薄くて速いため、予報の合計が低くても写真は台なしになります。星はかすんで柔らかくなり、月には暈が広がり、天の川は消えるずっと前にコントラストを失います。日没時には気づかない程度の巻雲の帯が、シャープな銀河中心とにじんだ染みを分けることがあります。

そのため、撮影時間帯の雲量が低いことに加えて、予報が許す範囲で合計だけでなく層ごとにも低いか確かめます。総雲量10%の夜は良い夜です。一方、30%がすべて薄い上層雲が流れてくるだけの夜は、小さな積雲が30%の夜とは違います。前者は全体にかかる霞で、後者は待てば抜けるいくつかの隙間です。見るのは1日のまとめではなく1時間ごとの数字で、傾向にも注目します。真夜中に抜けて晴れる前線は、悪化していく晴れの予報よりも良い知らせです。

予報は、先の日付ほど割り引いて信じる

予報は確率であり、先になるほど、とくに雲については分からなくなります(雲は最も予測しにくいものの一つです)。

  • 5〜7日前: パターンを見つけるために使います。高気圧の尾根が発達しているか、前線が来るか。どの週末に注目すべきかが分かる程度です。
  • 2日前: どの夜かを決める材料になります。予定をそれに合わせて組み直します。
  • 当日: 決め手になる予報です。午後にもう一度、出発前にもう一度確認します。雲の予報は1時間ごとに変わります。
  • 最後の数時間: 数字を信じるのをやめて、空を見ます。中緯度で天気が来やすい西の空は、晴れていくのか、埋まっていくのか。衛星画像やレーダーの動画で、雲の縁がこちらに向かっているかどうか分かります。

第二の候補地も頭に置いておきます。尾根や川の向こう側で1時間ほど離れた、雲が届かないかもしれない場所です。良い夜は、予報が全員に同じでも、隣の谷では違う夜になることがよくあります。

晴れていることと、透明なことは違う

雲のない夜でも、空気に靄、湿気、煙、塵が含まれていると、見映えは落ちます。これが透明度で、淡い星の光が大気を通ってどれだけ届くかを表します。広角の天体写真は、惑星や望遠鏡で重要な「シーイング」(瞬き)よりも、透明度にはるかに左右されます。広い画角の天の川では、シーイングはほとんど問題になりません。

澄んだ透明度の高い夜は、冷たく乾いた空気のあとに訪れがちです。寒冷前線が通過して1、2日後、北風か西風が安定して吹いているときです。蒸し暑く湿った夜、山火事の煙が出ている日、遠くの砂漠から塵が届く夜は、雲量がゼロでも条件が悪くなります。暗くなってすぐ星が乳白色に見えるなら、それは透明度の問題で、別の夜を待つしかありません。

撮影を救う2つの小さな数字

風。 三脚と長時間露光は突風に耐えられません。風速が約25 km/h未満なら、重りをつけた三脚でたいてい大丈夫です。それを超えるなら風をよけられる場所を探すか、星が甘くなるのを受け入れます。

気温と露点。 気温が露点まで下がると、前玉が曇ります。予報で両者の差を見て、約3 °C未満で縮まっているなら、フードタイプの結露防止カバーとヒーターバンドを持っていきます。そうしないと撮影の最後の1時間は曇ったレンズになります。(同じ差が霧を生む条件でもあるので、夜露対策が必要な夜は、まったく別の被写体に向く夜でもあります。)

暗さを最も手軽に手に入れられる場所を選ぶ

暗さは場所の問題でもあり、予報では解決できません。光害は、その地点で地上からどれだけ人工の光が立ち上っているかを示し、天の川が川のように見えるか、噂程度にしか見えないかを左右します。使いやすい読み方は比較です。数字が示すのはその場所で地上から上がる光の量であって、今夜の空の明るさではないので、雲、靄、月のことは分かりません。候補を順位づけするのに使い、そのうえで明らかに暗い最寄りの場所を探し、移動する価値があるかを考えます(詳しくは暗い空を見つけるを参照)。

Viewpointでできること

太陽、月、天の川のタイムテーブルは計算できる部分で、Viewpointの計算ツールと天体暦が、あなたの端末上で無料・通信なしで求めます。いつ暗くなるか、いつ月が出ているか、いつ銀河中心が場所と日付に応じて地平線の上にあるかが分かります。

計算できない部分を受け持つのがコンディションタブです。フォローしている場所ごとに専用のページがあり、これからの時間帯とその雲量、いちばん良さそうな時間帯を示す快晴の夜タイル、暗さと月の時刻、天の川の撮影帯、そして近くのより暗い場所を距離と方角つきで並べる光害タイルが表示されます。場所のアラートをオンにすれば、晴れた夜が近づいたときにViewpointが知らせてくれるので、真夜中に天気サイトを何度も更新する必要がありません。コンディションにはOnlineサブスクリプションが必要です。計算ツールと天体暦は不要です。

クイックスタート・チェックリスト

  • まず撮影できる時間帯を決める:暗い、対象が上がっている、月が沈んでいる。予報はその時間帯だけを見る。
  • 1時間ごとの雲量を層で読む。下層と中層は不可で、薄い上層雲はコントラストを静かに奪う。
  • 予報は日付の遠さに応じて信じる:1週間前はパターン、2日前はどの夜か、当日は決断、最後の数時間は自分の目。
  • 最も澄んだ透明度を得るには、前線通過後の冷たく乾いた空気を狙う。
  • 荷造りの前に風と気温と露点の差を確認する。
  • 候補地の光害を比べ、1時間ほど離れた第二の候補地を用意しておく。
Viewpointアプリの「コンディション」画面
Viewpointのコンディションタブ。フォローした場所の1時間ごとの予報と、撮影に重要な光と空の状態を確認できます。